ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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読書メモ

 大切なものをすべて見わたせる

バレエ漫画の『Do Da Dancin'』を読んでいる。作者は『アランフェス』で昔お世話になった槙村さとる先生だ。エリート少女の成功物語ではなくて、バレリーナとしては峠を過ぎた年齢の主人公が、なぜバレエなのかを自分でつかんでいく精神的な過程が描かれてい…

 ジェーン・ブラント『乳がんと牛乳』

筆者のブラント女史はイギリスの第一級の地球物理学者だ。乳がんにかかり、手術で腫瘍を取るはしから、リンパに再発してしまう。ここからが面白い。科学者として、病気の原因を追究し始めたのだ。その結果、アジアには乳がん患者が少ないことなどをヒントに…

 ほんとは怖い『風の又三郎』

子どもの付き合いで、何十年ぶりだろう、宮沢賢治を読んだ。そして気づいた。私はこの作者がすごく嫌いだ。 宮沢というのは、「雨ニモマケズ」のような根性・努力・友情などを手放しで賞賛できる無神経さ(普通は恥ずかしくてできんわ、対抗できるのは太宰く…

 普遍というレトリック

ウォーラーステインの『ヨーロッパ的普遍主義』より。著者が言う普遍主義とは、特定の概念を「普遍的」なものだと決めつけることによって、世界のシステムが裡にはらむ構造的暴力を隠蔽するものとして機能するレトリックのことだ。これって、私が元旦のペー…

 会長は「出羽おば」

ようやく昨日仕事の締め切りが一件終わり、時間がとれた。斉藤美奈子『物は言いよう』を一気に読む。はんぱなフェミ学者よりも、この人ほど物事がちゃんとわかっていて、それを言葉にできる人はいないと思う。 で、「出羽おば」のところで噴きだしてしまった…

『精神科医がうつ病になった』

心に一番近いのは、音なのかもしれない。(p.163) 病んだ著者が、久しぶりにギターを取り出して、はじいてみたときの実感だ。 この病は「克服する」とか「治す」ではなく、心に負担がかからないように、過労にならないように、自分の病んだ心と「どうやって上…

 日本人の肌は何色か

表象としての「日本人の肌の色」についての研究は、これまでほとんどなかったそうだ。これ自体が西洋支配というタブーにふれるからだろう。そういえば、クレヨンの「肌色」は差別的だというので最近は使われなくなったなあ。 西洋人は、16世紀までは東洋人の…

 対決から対話へ

小林博氏の『がんに挑む がんに学ぶ』を読んだ。具体的に役立つような情報はあまりないが(岩波文庫の『がんの予防』の二番煎じのような感じもする)、考え方が気に入ったフレーズをいくつか、抜き出しておこう。 がんは「老化病、遺伝病、環境病」の3側面…

 『腸内細菌のふしぎな話』

再発を防ぐには何よりも体の免疫力を高めないといけない。免疫に一番かかわる臓器が腸だ。本書は乳酸菌やビタミンの働きを説明している。「これが絶対にいい!」という論法ではなく、「いろいろな可能性がある」という言い方、つまりすべてが研究途上で未確…

 『脳は直感している』

がん患者にはいろいろな知識や能力が要求されるとつくづく思う。医学的知識(最低限でも保健体育の基礎知識)、社会についての理解(医者や製薬会社が何で動いているか)など。経済の原理(「お金をかければ治る」)はなんら治癒と結びつかない。むしろ「こ…

 『患者よ、がんと闘うな』

古本屋で100円で売っていたので買ってみた。ご存知、1996年の近藤誠氏の有名な本である。抗がん剤や手術などの治療法は効果が乏しいか、あるいはさらに悪化させる場合があるから、何もしないのが一番、という主張だ。(読んでいないが)アンチ近藤本もその後…

 『笑いと治癒力』

カズンズ『笑いと治癒力』はこの道では知らない人のない名著だ。「要するに笑えば治るんでしょ」と結論をわかった気になっていたので、本書は「つん読」状態だったのだが、先日初めて読んだ。読む価値はあると思った。 意外にも「笑い」の話はあまり出てこな…

 がんは不良少年

この本『がんは一日にしてならず 発がんと予防の最新知識』はとても気に入った。がんにまつわる話題を網羅的に扱っていて、しかもわかりやすい。「がん=不良少年」など、たとえがたいへんうまく使われている。おかげで、これまでピンとこなかったフリーラジ…

 「わたしは認識の鬼でありたい」

「ガン本」をチェックする習慣がついてきた。芸能人の体験談などを除外しても、7割方が「ハズレ」であることもわかってきた。ネットサーフィンで偶然に頼藤和寛氏の名前を見つける。教え子らしき人のサイトで、彼に対する全幅の尊敬と愛が感じられた。これな…

 坪野吉孝『食べ物とがん予防』

こんな食べ物ががんに効きますよ〜という類の本ではない。逆に、「○○○はがんに効く」という新聞記事を「疑う」レッスンをするための本だ。なぜメディアの報道に問題があるかというと、重要な情報ではなく、記事にしやすい情報(話題になる情報)や企業利益に…

構造としての差別

すなわち、財産も家も情報もなにももつことができない状況に置かれている女が、すべてをもてる可能性のある男にあこがれ、恋をする。もっと言えば、男社会というのは、いやでも女が男にあこがれ、恋せざるをえないように仕組まれているということです。その…

しりあがり寿『オーイ♡メメントモリ』

生への本源的な情熱と、世間が喧伝するうすっぺらい「幸せ」は全く異なるのだということをしりあがり寿は昔から主張し続けている。漫画の中では『ヒゲのOL』や『ジュリアナおやじ』が大好きだ。今回の作品の表題「メメントモリ」は「死を想え」というラテン…

トンデモ本

内容がむちゃくちゃで読んではいけない本をトンデモ本と呼ぶ。電車の中で読んだ山下悦子『女を幸せにしない「男女共同参画社会」』はそれだった。1時間が無駄になった。論旨は以下の通り。「男女共同参画社会は、独身のエリート女性が企画発案したものだから…

松井やより『愛と怒り 闘う勇気』

松井さんは女性ジャーナリストの草分けで、フェミニズム運動のパイオニアでもある、勇気と信念の人だ。肝臓がんで倒れるまで、世界中の差別問題に体当たりで取り組んだ。 柳原和子が「男性(マスコミ)ご用達」の「女性がん患者」であるなら、松井さんは最も…

柳原和子『百万回の永訣 がん再発日記』

帯には「どんなに絶望しても」「散文詩かと思える緊張の高い文章」。そう、俳句などが散りばめられた美しい文章で、卵巣がんの再々発、しかも医療過誤の著書などを出した社会派の著者だというのだから、期待して買った。重かったけれどタイトルがかっこよか…

アリュノ・グリューン『「正常さ」という病い』

「彼らは人間たちを撃ち殺すことができました――しかも完全に正常な状態で」という強制収容所の囚人の言葉から本書は始まる。殺害に携わった者たちは、特殊な洗脳を受けたわけでも狂乱状態にあったわけでもなく、ごく普通の精神状態にあった。本書は「正常さ…

 渡辺亨『がん常識の嘘』

医者の書いた「がん本」の好みついては、大きく近藤誠派と平岩正樹派に分かれると思うが、そうした趣味に走る前にまず読んでおきたい一冊だ。著者は乳がんの分野で最も著名で権威があるとされている医師だ。設立したばかりのHセンターを宣伝しすぎるきらい…

 アームストロング『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』

自分もこのように治るのではないかという希望と人格の陶冶を求めて人はこうした本を手に取るのだと思う。復帰後のツール・ド・フランス優勝など、結果的に彼のなしとげたことはすごいことだが、超人的かつ特殊な精神の持ち主ではない、普通の人だということ…

 千葉敦子『「死への準備」日記』

「アメリカは○○が優れている、日本はそれが遅れている」の論法が多く、それに反感を感じる読者も多いだろうが、彼女にはそれを言う権利があると思う。一つには言っていることが(執筆後20年たった今も)すべて事実であり、もう一つには彼女が日本人で、かつ…

 山崎豊子『白い巨塔』

『白い巨塔』と言えば、何十名もの白衣の医者が行列を作る「財前教授の回診です〜」シーンが思い浮かぶ。小説は中学生の頃に一度読んだはずだが、当時はわからないことも多かったと思う。「大人の世界って汚いなあ」くらいの印象ではないか。 「大人&社会人…

 高橋フミコ『ぽっかり穴のあいた胸で考えた』

以前からウェブ上の連載で読んで、私淑していたフーサンのエッセーが本になった! とてもうれしい。みんなに薦めたい。 それにしても、彼女ががんを耳かきでほじくりだしていた風景は、なんど読んでも、ぞぞぞ… でもほじくりだしたい気持ちはとてもよくわか…

 「フルツロンがベスト」の意味

たとえば私は「リュープリンだけでいいでしょう」と医者に言われた。そのことの意味を図りかね、いろいろと調べた。平岩正樹『医者に聞けない抗癌剤の話』がその暗示的意味をうまく説明していたので引用しておこう。たとえばある医者が「フルツロンがベスト…

 上野圭一『わたしが治る12の力』

上野さんはワイル博士の本の翻訳者で、きちんとした訳が評価できたので、著書も買ってみようと思ったのがきっかけ。結果的には、すごくおすすめだった。経歴を見ると、早稲田の英文科を出て、テレビ局に勤めた後、鍼灸師に転身。自ら体を張って治癒を実践し…

 松井真知子『アメリカで乳がんと生きる』

さすがアメリカで女性学で学位を取り、教鞭をとっているだけの人だと思った。社会制度と医療のかかわりをしっかりと調べて書いている。たとえば閉経前の白人女性と黒人女性の乳がん患者の生存率の差が何を意味しているのか。さらに閉経後の黒人女性の生存率…

 山中登美子『乳がん克服のための十二章』

『乳がんをかかえて生きる女たち』著者の「乳がん体験十年目のリポート」。表題の「克服」や「十二章」の言葉にひかれ、具体的な指標を得られると思って読んだのだが、「入院生活を楽しむ」「インフォームド・コンセント」などのありきたりの内容だったので…