ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 千葉敦子『「死への準備」日記』

アメリカは○○が優れている、日本はそれが遅れている」の論法が多く、それに反感を感じる読者も多いだろうが、彼女にはそれを言う権利があると思う。一つには言っていることが(執筆後20年たった今も)すべて事実であり、もう一つには彼女が日本人で、かつアメリカに住んでいたからだ。
そしてこれは彼女の最後の日記だ。化学療法のときの詩を引用して、深い敬意を表させていただきたい。

   ヤケになることもなく


五回も六回も続けざまに吐いたあとで
静かにお茶を飲みながら
ヤケになることもなく
何が口にはいるかを考える


スープもだめ
ヨーグルトもだめ
玄米粥もだめ


では
ナイフを入れると
どろりと流れる
新鮮なチーズなら?
ニューヨーク州の農家が
昨日売りにきた
黄色いりんごなら?


りんごを薄切りにして
チーズを載せ
ゆっくりと口に運ぶ
どうぞ吐きませんように
とにかく生きなければならないのだから (87/5/29)
(文集文庫p.170-171)

「死への準備」日記 (文春文庫)