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松井やより『愛と怒り 闘う勇気』

松井さんは女性ジャーナリストの草分けで、フェミニズム運動のパイオニアでもある、勇気と信念の人だ。肝臓がんで倒れるまで、世界中の差別問題に体当たりで取り組んだ。
柳原和子が「男性(マスコミ)ご用達」の「女性がん患者」であるなら、松井さんは最も男性が警戒し、敬遠するタイプの「女性ジャーナリスト」だ(これはだから褒め言葉である)。私が時々使う「男マスコミ」の語感がわからない人はこれを読んでほしい。朝日新聞の保守性と男性性がよくわかるはずだ。
本書はがん告知を受けてから死ぬ4日前まで書き続けられた松井さんの自伝であり、また、遺言でもある。告知から死ぬまで82日間しかなかった。それはどんなに無念なことだろう。終章の「21世紀を生きる若い女性たちへのメッセージ」は胸が痛い。普通の意味では「若く」ないが、世間知らずで概して子供っぽい乳がん患者たちにも有益なメッセージだと思う。

第一のメッセージーー感性・知性・行動力のエンパワメントを
エンパワメントとは何か、さまざまな見方があり、女性が権力を持つ立場に近づくエンパワメントもある。しかし私にとっては、権力者に立ち向かうために感性・知性・行動力を持つことのように思える。〔…〕そして知性というのは、人々が苦しみや痛みをもつ原因となっているものを理解する知の力である。

愛と怒り闘う勇気―女性ジャーナリストいのちの記録