ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 アームストロング『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』

自分もこのように治るのではないかという希望と人格の陶冶を求めて人はこうした本を手に取るのだと思う。復帰後のツール・ド・フランス優勝など、結果的に彼のなしとげたことはすごいことだが、超人的かつ特殊な精神の持ち主ではない、普通の人だということはよくわかった。だから彼を賞賛するのでなく、そのまま模倣したいと思った。だから、これはいい本だったと言える。
スポーツ選手の彼でさえ、あらゆる本を買って読みまくってうるさい患者になったとのこと。日頃私はうるさすぎではないかと危惧していたが、いやいや、ぬるすぎる。もっとやらなくちゃ、という思いを新たにした。彼がうるさい患者なのは、たんにアメリカ人だからではない。トップアスリートであるがゆえに、自分の身体と精神の相関関係を体験的に正確に理解していた。猪突猛進・勝ちたい気持ちだけでは自転車競技で優勝できない。勝つためには心理的な駆け引きから風力の勉強まで、「知識」が不可欠だということを体得している。だからがんも同じように考えたのだ。だとすれば忙しくてしょうがない。嘆いている暇もない。そのスピード感のようなものが全編を通して漂っている。そうやって彼はがんを駆け抜けたのだ。
それにしても彼のような有名人だと、病気になったとたん、全米の著名な腫瘍学者が電話をかけてきて「私の治療を受けませんか」と勧誘にくるらしい。うらやましい。彼がリンパ・脳・肺転移のある深刻な睾丸がんから回復できたのは、個人の気力や努力もさることながら、彼の社会的な立場とその情報量の多さにもよるだろう。とりわけ治療の過程で医者の一人ひとりを親友にしていって、さまざまな助言を引き出すストラテジーは見事だ。
日本ではそれが難しい。医者はいばっているし、患者は卑屈だからだ。とりわけ乳がんでは、ね。
ただマイヨ・ジョーヌのためでなく