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健康ブログであるような、ないような

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 ジェーン・ブラント『乳がんと牛乳』

筆者のブラント女史はイギリスの第一級の地球物理学者だ。乳がんにかかり、手術で腫瘍を取るはしから、リンパに再発してしまう。ここからが面白い。科学者として、病気の原因を追究し始めたのだ。その結果、アジアには乳がん患者が少ないことなどをヒントに、乳製品が原因だったと考える。もちろんいろいろな文献を読んだり調査をした上でのことだ。そして、牛乳をやめてわずか数週間後、腫瘍がすっかり消えてしまい、今現在にいたるまでお元気なのだそうだ。
まずなによりも、自分の病気に対する姿勢として学ぶものがある。科学者としての識見をいかして冷静に原因をつきとめていった。俗説をうのみにしなかった。原因究明のプロセスは、まるで推理小説を読むときのように興奮させられる。もしかしたら、牛乳そのものではなくて、そういう科学者としての興奮や充実感が彼女の病気を治したのではないかと思えるくらいだ。
もちろん牛乳だけが乳がんの原因ではないから、牛乳さえやめれば治るというものではない。だが、少なくとも牛乳は、細胞分裂の盛んな赤ん坊牛のための飲み物で、それを違う動物である人間の、しかも大人が飲むことは本来的におかしい。たとえばライオンのミルクを飲みなさい、と言われたらこわくて飲めないだろう。
しかも、市販の牛乳は妊娠中の乳牛(これ自体不自然なこと)から絞ったものなので、大量のホルモン(エストロゲン)を含む。せっかくタモキシフェンなどを飲んでエストロゲン抑制に努めているのに、これでは元も子もない。しかも、そういうホルモン反応性の細胞、すなわちがん細胞の細胞分裂を活性化させる!これを読んだら、もう牛乳は飲めなくなった。
もう一つの根拠はがんの発生年齢だ。その他のがんは、年齢が増せばますほど発症頻度が上がる(DNAに老化のプログラムが組み込まれているので)。ところが、乳がんだけは40代にひとつの発症ピークを迎える。それはなぜだろう。胸(乳腺)の発育が盛んな思春期から20代にかけて乳製品を過剰に摂取することにより、乳がんの原型がいくつも発生し、そのうち強力なものが10年、15年かけて1,2センチの大きさになってゆく・・・そう考えるとつじつまが合う。(私自身も、中学生の頃大量に牛乳を飲んでいた)
それなのに、なぜ牛乳だけが良いとされてきたのか。その情報操作に興味がある。
たとえば、訳注にあった説明だが、『育児書』で有名なスポック博士は最初熱烈な牛乳推進論者だった。だがあるときから180度方向転換をし、途中の版からは牛乳の推奨を削除している(何か気づいたのだろう)。ところが、日本で訳され、売られ続けているのは、相変わらず古い方の版なのだ。欧米の権威が言うのなら大丈夫だろう、と信頼した人はどれほど多いことだろう。ここには、絶対に政府や食品メーカーからの圧力があったと思う。母乳を卒業した幼児に牛乳を飲ませることを金科玉条としてきた日本の教育は、実は乳がん前立腺がんを増やし続けてきた。いやむしろ、牛乳さえ飲めば欧米人のように背が高くなると信じこまされてきた。歪んだ西洋崇拝の帰結が、ここにあると思う。
たいへん残念なことがあった。ML上でこの本を薦めてくださった病理医の先生がMLを退会された。メンバーの一部が先生に対して攻撃的な批判を行ったからだ。それは、これまで信じてきた牛乳健康法を否定された不快感に基づく、やつあたり以外の何ものでもない、低レベルの批判だった。これまでボランティアで多大な情報を患者にもたらしてくれていた先生を辞めさせてしまったのだから、ML会員全員にとっての損失ははかりしれない。このやつあたりの患者こそ、謝罪して退会すべきだと、個人的には思う。先生を攻撃したからって、自分の病気が治るわけではない。牛乳を信じているのなら、毎日ガブ飲みすればいいだけのことだ。
ものごとの原因と結果、責任の所在、そういうことがまるでわからない、社会性を欠いた乳がん患者というものに、お医者さんは失望したのではないかな、と思う。
乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか