ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 『脳は直感している』

がん患者にはいろいろな知識や能力が要求されるとつくづく思う。医学的知識(最低限でも保健体育の基礎知識)、社会についての理解(医者や製薬会社が何で動いているか)など。経済の原理(「お金をかければ治る」)はなんら治癒と結びつかない。むしろ「この医者はなんとなくダメだ」「この薬はなんとなく効かない」などという直感にたよる局面が多い。これは、そういう「直感」を説明し、正当化してくれる本だ。直感とは、非言語的、非論理的な感覚で、過去の記憶を手がかりにして脳自身が何かを欲している状態だ。「○○をしよう」と意識化するよりも0.5秒前に準備電位が脳内で発生しているというリベットの実験などが紹介されている。本来的には、経験の多い大人の方が子供よりも直感力は高い。ただし大人は、自己合理化したり(無理やり理屈で説明する)、社会的抑圧があったり(直感を封じ込めて体面を優先させるなど)、他者の影響を受けたり(横に傍観者がいると何も考えなくなる)しやすいので、直感を十分に使っていない場合がある。だから脳の声に耳を傾けようではないか、という論旨だ。
がん患者なら一度は耳にしたことのあるギャレット少年の治癒例も取り上げられている。脳腫瘍によって余命宣告を受けた少年が、心理療法士の指導下で宇宙戦争ゲーム感覚で腫瘍をやっつけることのイメージトレーニングを毎日続けたら治ったというものだ。イメージすること自体は直感ではないが、療法士のその時その場での思いつき、それを受け入れた子供の直感、そうしたものが複合的にプラスに作用して治癒した、という捉え方だ。
直感の定義が少し曖昧なこと、自然科学系の内容にしては論証の仕方が直感的なこと、などが気になったが、これもまあ、ご愛嬌というところか。気分転換には良い本だと思う。
ps.某所で話題の柳原さんにひきつけて考えると、「男さがし」のような「医者さがし」は、本質的に医学的・社会的知識とは無縁だし、また、直感とも無縁のアプローチである。あるのは一つ、自分だけを特別扱いしてくれる医者(男)をゲットすることによって、自分を他の病人(女)と差異化しようという俗っぽい魂胆だけ。普通は7時間待ちの超有名ブランド病院の有名医師が自分だけには特別に○×療法を試してくれるからって、それが何なんだろう。それよりも自分の体の声に耳を傾けたい。

脳は直感している (祥伝社新書)