すなわち、財産も家も情報もなにももつことができない状況に置かれている女が、すべてをもてる可能性のある男にあこがれ、恋をする。もっと言えば、男社会というのは、いやでも女が男にあこがれ、恋せざるをえないように仕組まれているということです。その仕組みが構造としての差別なのです。こういう状況では、そういう差別的な恋しかできない、裏返せば、女は男に愛されることでしか自分のアイデンティティが見つけられないような状況に置かれてきたということです。(p.151)
構造としての差別をよくまとめている文だと思う。「女」を「患者」に「男」を「医者」に置き換えると、柳原さんのところで書いたがん患者の医者崇拝の構造にも相当する。最後の「アイデンティティ」は「自尊心」や「生きがい」に置き換えるとわかりやすい。