ergo sum

健康ブログであるような、ないような

はてなダイアリーからの引越しにつきリニューアル模索中。

引き続きどうぞよろしくお願いします。

2006-01-01から1年間の記事一覧

 高橋フミコ『ぽっかり穴のあいた胸で考えた』

以前からウェブ上の連載で読んで、私淑していたフーサンのエッセーが本になった! とてもうれしい。みんなに薦めたい。 それにしても、彼女ががんを耳かきでほじくりだしていた風景は、なんど読んでも、ぞぞぞ… でもほじくりだしたい気持ちはとてもよくわか…

 とんぷく

「ママ、ママの病気ってとんぷく?」 入院時にもらった下剤の袋を見て喬が言った。右上にひらがなで大きく「とんぷく」と書いてある。なるほど病名をはっきり教えなかったから、気になっていたようだ。その日から、私の病名はとんぷくになった。

 「フルツロンがベスト」の意味

たとえば私は「リュープリンだけでいいでしょう」と医者に言われた。そのことの意味を図りかね、いろいろと調べた。平岩正樹『医者に聞けない抗癌剤の話』がその暗示的意味をうまく説明していたので引用しておこう。たとえばある医者が「フルツロンがベスト…

 医者を説得する 〜化学療法へ〜

手術後の病理検査の結果、ザンクトガレンの分類でいう中リスクだとわかった。ホルモン受容体が陽性なので、医者はリュープリンだけでいい、という判断。だが納得がいかず、いろいろ調べた。オンライン相談2件、癌専門病院でのセカンドオピニオン1件。だいた…

 葬式写真の女

一泊の出張に行き、夜は女同士の飲み会に参加した。気のおけない仲間たちとのおしゃべりのはずだが、仕事のことにせよ、日常の食べ物や住まいのことにせよ、彼女らとの話がちっとも面白くなかったことを記憶している。たぶん私の方が変わってしまったのだろ…

 上野圭一『わたしが治る12の力』

上野さんはワイル博士の本の翻訳者で、きちんとした訳が評価できたので、著書も買ってみようと思ったのがきっかけ。結果的には、すごくおすすめだった。経歴を見ると、早稲田の英文科を出て、テレビ局に勤めた後、鍼灸師に転身。自ら体を張って治癒を実践し…

 乳がんと「シミ」

乳がんの感覚的なとらえ方というか、増殖の具合がなにかに似ていると思っていた。このデジャ・ヴュの感覚。理由が今日解けた。 そう、シミと同じなのだ。肌がなんとなく黒っぽいとは思っても、明らかに大きなシミになるまでそれと気づかない。だからくすんで…

生命くん

ふとCMを見て。 知らないうちに明治生命と安田生命が合体して明治安田生命になっていた。 ある生命とある生命が合体して別の生命に… 何の生命だろう。 「明治安田」っていう名前の生命。 安っぽく、ありふれた名前の生命だ。 それは生きているのだろうか。…

 いちばん大切なもの

「あなたが一番大切」と歌うサラ金のCMを見て。 「ママ、あれ、まちがってるよねー。一番大切なもの、あなたじゃないよね」 「じゃあ何?」 「命だよ」 その数日後。 「いちばん大切なもの、ママ、なんだか知ってる?」 「いちばん? 命でしょ。こないだ言…

 転移の種類

「乳がんディクショナリー」をぱらぱらとめくっていた。「転移」の項目。転移には「リンパ行性」と「血行性」と「播種性」の三種がある。「血行性転移」の例として「骨転移、肺転移、肝転移など」が挙げられている。もちろんごく小さい頃から乳がんが全身に…

 村主さんの言葉

世界フィギュア2006の女子決勝を見る。村主さんが2位となった。トリノでは4位で、荒川さんと並んで真剣に戦っていたと思う(芸能人気分で浮かれはしゃいでいた安藤なんとかは軽蔑する)。試合前のコメントで村主さんは行った。 「どんなことについても、スケ…

 松井真知子『アメリカで乳がんと生きる』

さすがアメリカで女性学で学位を取り、教鞭をとっているだけの人だと思った。社会制度と医療のかかわりをしっかりと調べて書いている。たとえば閉経前の白人女性と黒人女性の乳がん患者の生存率の差が何を意味しているのか。さらに閉経後の黒人女性の生存率…

 山中登美子『乳がん克服のための十二章』

『乳がんをかかえて生きる女たち』著者の「乳がん体験十年目のリポート」。表題の「克服」や「十二章」の言葉にひかれ、具体的な指標を得られると思って読んだのだが、「入院生活を楽しむ」「インフォームド・コンセント」などのありきたりの内容だったので…

あわれみ

がんでない人ががんである人を哀れむのは、寿命が無制限に長い人が寿命の限定された人を哀れむことであり、それはちょうど足の長い人が足の短い人を哀れむのと同じことなのだ。相手がたまたま短足だというだけで、かわいそうと決めつけ、同情する。しかし相…

 女医ならいいか

権力的でない医者と患者の関係がありうるのだろうか。それは権力的でない師弟関係、男女関係等がないかと問うのと同じことになる。原則的に医者と患者、男と女という二重の権力関係が生じるのが乳がんという病気の特殊性だ。さらにいうならば、働き盛りと老…

 「言ってくださいね」

「痺れるところがあったら言ってくださいね」と毎朝看護婦から言われる。だから昨日、「上腕の裏が痺れます」と言ったら… 「あら、気のせいでしょう?手術の後はよくあることよ?」といなされた。言っちゃいけなかったの?自分で自分を否定しろということ?…

 いやな言葉

手術のときに「がんばってね」といわれること。意識がないのにどうやってがんばるのか。手術って、精神力でどうにかなる問題なのか。それともの私の体力や免疫力に話しかけているのか。細胞に話しかけてるのか。(美容院で洗髪のたびに「お疲れ様でした」と…

 徴候

ワイル博士によれば、がんは免疫系がバランスを崩した証拠だそうだ。どこかしらに不具合があるからこそ、なるのだと。いわれてみればおかしいなと思うことが4,5年前から始まっていた。 2001年、ころんで擦り傷を作ったが、普段は3,4日で治るような傷が…

 赤白黄の謎

入院中、病室の入り口のネームプレートの横に、それぞれ赤や白や黄色の印がついていた。全く気づかなかったのだが、ある日親しくなった入院患者のおばあさんがそれを指差して、「これ知ってる?」と教えてくれた。「実は赤は手術直後か、かなり危ない人なの…

 荒川選手金メダル

おめでとう。荒川選手の言葉に胸を打たれた。 「過去は振り返らずに 自分の限界は定めず 満足するのは最後のその瞬間だけでいい」 「失敗が怖くなかったですか?」 「失敗する仕方を忘れるほど練習しましたから」

 掃除しなくたって

お互いが主婦。帰宅後は家の掃除がたまっていて大変ですね、という世間話をしていた。「なーに、掃除しなくたって死にやしませんよ」と言いかけて、やめた。昔の私が好んで使ったフレーズなのだが、がん患者ががん患者に言うと意味深になる。「掃除をしなく…

 終わるところへ向かって

同室のおばあさんのひとことが身にしみる。 「どうにか今日も日が暮れましたねえ」 それだけでいいのだ。 死とは、休息ではなくて動揺である。動揺とは、リズムの不在である。(バルト『新たな生のほうへ』より) がんのことを考えると納得がいく。体がリズ…

 いびき

病院の夜。女子の病室にいびきが響く。不思議なことに、いびきだけ聞いていると男か女かわからない。低い、うなるような、ドスのすわった音声。そもそも男女の声の差は何に起因するのか。声帯の器質的な問題ではなくて、意識のせいではないか。ジェンダー的…

 あとは子分を…

ヘイ、親分はやっつけた。あとは全国に散らばった子分をやっつけるだけだぜ。 (手術直後の心境)

 ほしいもの

「ぼく、一番ほしいものあるよ」 「なに」 「二つの命。スズメバチにさされても、五秒後に復活できるじゃない」 「ああそうねえ。ママも二つ目の命ほしいなあ。どうやったらもらえるかたっくん研究してくれないかなあ」RPGゲームのやりすぎだとは思うが。…

 ○○らしさ

入院してパジャマを着た病人になったとたん、人はこれまでの属性を失う。どういう会社のどういう地位のどういう出身のどういう学歴の…そんなことはどうでもよくなる。患者どうしにとって、あるいは医者にとっても、重要なのはその人の病気が「何」であり、ど…

 入院アンケート

「入院される方へ」というアンケートに記入しなくてはならない。看護課からの質問一覧が書いてある。「性格」というところに「気が強い」と書いてしまったが、書くべきでなかっただろうか。無記入にして看護婦に先入観をもたれないようにしたほうがよかった…

 ええ、きっと

入院のことを喬に伝えた。「それ、僕のせい?」「ううん、ぜんぜん関係ないよ」 パズルの本をもっていこう、フルーツ味のキシリトールガムをもっていこう、「荷物に全部名前をつけなくちゃいけないなんて保育園みたいだねえ」といいながらテプラをする、とな…

 時間に錘を

入院前の雑用を片付けるだけで一日が過ぎる。メールを10通以上打った。治療法の選択によっては、4月以降の仕事を休まなくてはならなくなる。放射線療法は5週間毎日病院に通わなくてはならないことなどは事前に教えてほしかった、と医師を恨んだ。来年から新…

 激むかつく

義理の母に病気のことを伝えた。それにしても、ガンというとすぐに「原因探し」を始めるはやめてほしい。 「あなたのお母さんは乳がんにかかっていないんでしょ?おばさんやおばあさんはどうなの?」 まるで遺伝のせいだといわんばかりだ。おまえの息子やお…