ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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プロスペクト理論を健康にあてはめてみた

みなさま、お盆ですが、きちんと心身の休養をなさっているでしょうか。
さて、退職金の運用のために経済サイトを読んでいたら、なぜみんなが同じような投資の失敗をしてしまうのかをプロスペクト理論というもので説明していた。
1.損失回避
10万円儲かった喜びと10万円損をした悲しみの大きさは等価ではなく、人は損失の方に過剰に感情的に反応する(2〜3倍の強さらしい)。不安感が強すぎるため、損失を恐れて利益の出る前に売ってしまったり、損失が出ても損失を認めたくなくて損切りしそびれる。
2.参照値
人は上述のような「10万円」というような絶対値で物事を決められず、独自の基準値を設定してそこからの乖離で判断する。この株は1000円で買ったからそれ以下の価格では売れないとか、知人が儲けたから自分も儲かるはずだ、とか。
3.認知バイアス
いわゆる勘違いで、分配金の出る商品は「良い」商品だという思い込み。実際は元本を取り崩して配分しているにすぎない。


おお、頭が痛い。まさに私の考え方はこれだから、投資なんかしたら、絶対に失敗するなあ。
ところでこれ、健康問題にもそのまま当てはまるのではないか。
1.損失回避
健康であることよりも、「死ぬかもしれない」がんに過剰に反応する。不安感が強すぎるために、診断前から無駄ながん検診やサプリメントに走ったり、診断後はたとえ初期であっても最先端の・過剰な・ブランド病院での治療に固執する。
「さ、先生、遠慮なく、ど、どーんと切っちゃってくださいな」ってやつ。
2.参照値
快眠快便といった現在の体調(絶対値)ではなくて、昔の私には乳房と体力があったからそれを取り戻さねばならない、とか、もっとひどい場合には、テレビのスクリーンに出てくるピチピチの若くて美しい俳優とか、80才過ぎてエヴェレストに登った三浦なんとかさんを基準にする。そのせいで現状はつらくなる一方だ。
3.認知バイアス
お医者さんや薬屋さんは、人を救うからいい人だ、と思う。たくさん薬を飲んだり、たくさんお金をかけたりすると、より健康になり、より死から遠ざかる、と思う、など。


こういう心理につけこんで商業主義が跋扈する。大衆の「錯覚」こそが儲けどころであり、その錯覚を次々に作り出しては差異化していくのが儲けのカラクリだ。勉強しない人はどんどん餌食にされる。
それでも投資であれば、騙された結果は金額という数字で見ることができる。しかし健康については永遠に可視化されないので、まさに「死ぬまで」騙され続ける。また、投資の参入者はほんの一部だが、健康については全員が参加を余儀なくされる。だから金融市場よりも健康市場の方が儲かる。


「2人に1人ががんになる時代」でありながら、「自分だけはがんになりたくない」「自分だけは死にたくない」と思って奇天烈な行動に勤しむことは、「あなただけに大もうけの秘密教えます!」という金融商品を買い込むのと同様だ。そして「がんになりたくない」という不安感を煽るのが、アヒルをグワッグワッ鳴かせている生命保険会社たちだ。このアヒル、最近は郵便局の中にまで進出して、うっとおしいことこの上ない。「がん不安」を公共の施設にまで持ち込むことで、パブリックなものにしたいらしい。