ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 父入院

その後の父の様子をまとめておこう。
こちらで手配した地元のJ病院にいかず、ほかの病院に行ったり、なぜか耳鼻科にかかったり(食道がんだと説明されたのに、喉が痛いので耳鼻科マターだと思っている)、放浪していた。だが先週、呼吸が苦しくなったとのことでJ病院に入院した。受け入れてくれた病院には本当に感謝だ。
ケアマネが私の携帯番号を病院に教えたために何度も看護師から電話がかかってくる。とりあえず、個人情報としての病床での名札掲示と、暴れた場合の身体拘束の許可が必要らしいので、許可し、昨日は私が病院に行ってきた。
電話で看護師は「もう喉がこぶのように腫れて、WBCが2万もあって炎症が激しく、せん妄寸前で点滴を引っこ抜いて血まみれになったり、間違った場所に放尿したり・・・」とかなり大変そうな様子だった。予後はあと一ヶ月くらいらしい。
だが実際に行ったらそれほどでもなく、たしかに喉のリンパが両側腫れてピンポン玉くらいだが、意識は(彼としては)正常だった。だが腰を拘束されて、おしめをつけられている。看護の側としてはそうするよなあ、と同情した。
この状態になっても、なぜか悪知恵が働く。おむつ交換のために拘束が解かれ、私が打ち合わせで別室に消えたとたんに、ベッドから脱走した。どこに隠れていたのか、そ知らぬ顔で戻ってきて、「山田さんがいいと言ったから」とテキトーな看護師の名前をでっち上げていた。
しかも広々とした二人部屋にいる。大部屋に入れば、と言うと、断固として拒否された。差額ベッド代は4320円/日で、これは高額医療費の対象にはならない。一ヶ月入院したら約13万円だ。もちろんこんな計算が父にできるはずもない。子供が全部どうにかしてくれるだろうという甘えが見て取れたので、父の手持ちの現金と当座の預金を病院に入院保証金として預け、いざというときはこれで清算するよう頼んだ。家族が保証人になれない場合等は、10万円くらいの入院保証金を払うと入院させてくれる病院も多い。
父に関しては痛み止めと栄養補給以外、ほとんど治療も行わないので、病院側としても差額ベッド代で収益を考えているようで、お互いの利害が一致したというところか。それでも義父の病院みたいに、一日1万円以上もするIVHを入院条件につけてくるところよりは良心的だ。
自宅ではエンシュア・リキッドを飲み、週3の訪問介護で点滴を受けていた。ケアマネと病院のソーシャルワーカ(SW)がかなり有能な人だったようで、このあたりはうまく手配してくれていた。だが流動食や液体も喉を通りにくくなったので、病院では皮下の点滴を受けている。そろそろステント、胃ろう、腸ろう、IVHなどの提案が病院から来るかなと予測していたが、勧められなかった。こちらとしても本人に苦痛を与えるような不自然な延命は望みません、と伝えておいた。
本人が検査を嫌がるらしいのでCTなどは取っておらず、血液検査のみでは転移の様子もわからない。どこかの転移による症状で亡くなるのと、栄養不足や衰弱で亡くなるのと、どちらが先か、という様子だった。もしかしたら後者の方が苦痛が少ないのかもしれない。
状況としては厳しいのだが、本人はまったく暗くなったり悲観する様子もなく、あいかわらず冗談や自慢話に花を咲かせ、看護師との知恵比べを楽しんでいる。突然看護師に怒鳴りだすのもストレス解消のスポーツみたいなものか。SWが困ってしまい、「もっとはっきりと告知した方がいいんでしょうか」と相談してくる。が、たとえ現状を話しても理解しないし、理解しようとしないし、すぐに忘れるし、そもそもサイ子は本質的に刹那的で先のことを気にしないのだから、これでいいのではないだろうか。誰々に会いたいとか、孫に来てほしいとか、これだけはしたおきたい、いうことも一言も言わないのだし。
死の恐怖がないのは、ある意味でたいへん羨ましい。
「いやあ、O先生は明日退院させてくれる、って言ったのに、看護師の田中さんが意地悪して退院させてくれないんだよう。意地悪だなあ」と悪びれずに笑っていた。