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 義父の入院

義父は80歳近く、やや認知症の気があるとは聞いていたが、たいしたことないと思っていた。ところが数週間前に吐血し、それによって肺がんのステージIV(腎転移)だとわかるとともに、入院先で誤嚥性肺炎を起こしてしまった。しかしそこは救急医療中心の共済系の病院だったため対応が悪く、治療も緩和医療もできないと放置された。ようやく義母のコネを使ってこじんまりした県内の病院に転院することができ、今日はそちらに一家でお見舞いに行ってきた。たまたま病院がみつかったからよいものの、こうした老人は世の中に溢れており、金もコネもなければ本当の「難民」になりかねない。(それなのに自分の受け入れ先を自ら捨て去ろうとする、うちの父の愚かさには改めて立腹する)
入院していると、薬剤や寝たきりのせいで、高齢者は一気に精神症状が進むことは父のときで経験済みだ。病名は違うが「飲食厳禁」モードも同様だ。しかし父は生来のわがままを発揮して、買い食いをしたり嘘をついたりしてそれなりにVIP病院ライフを楽しんでいたが、認知症の義父の場合は暴れたりチューブを抜いたりするので、両手はミトンで塞がれ、体も固定されていて、相当憔悴した様子だった。
「(cypres側の)あっちのおじいちゃんは、ぜんぜん元気だったってことが今になってわかるよ。これは長くないね」と息子があとでつぶやいていた。義父の肺がんのことは伏せてあったが、雰囲気を察したらしい。誤嚥性肺炎はまたすぐにでもおきるだろう。私も、もう一度お見舞いに行けるかどうかの瀬戸際だなと思ったので、今日は時間をかけて義父の話を聞いていた。うーん、お正月のお年始をサボったのが、なんとなく後ろめたい。
そもそも年始を欠席したのは、義父のせいではなくて、義妹に会いたくなかったからだ。その義妹も今日は病室にいて、KYぶりを発揮していた。
義父「その、ああ、おみまいは、むにゃむにゃ」
義妹「なに?え?お見合い?お父さん、お見合いするの?誰と?」
義父「すもっと、ええと、あれだ、このまえはむにゃむにゃ」
義妹「スモール?ストックホルム?なに?お父さん英語使ってんの?やだあ。もう自分が何言ってるのかわかんなくなってんでしょう。夢みてんの?夢だよ」
おそらく義父の言いたいことを99.9%理解していない。
近所にショッピングセンターができたので、帰りに寄ってみようという話を私がしていたら、
義妹「あそこね、一階の寿司屋がおいしいの。ほら、お父さん、昔私がよくテイクアウトで江戸前寿司買っていったでしょ?中トロがおいしいのよね。うーん、イクラもいいなあ」
をいをい!思わず私は義妹のひじを小突いた。飲食厳禁の人の前での寿司の話って、ボクシングで言うアッパーフックくらいのパンチ力があるはず。ある意味すごいよ、あんた。それともこいつは、自分自身がチューブにつながれたスパゲッティ状態と絶食を経験しないと想像できないのだろうか(もし彼女がそうなったら、お見舞いにいって寿司の話をしてやろうか?)

認知症にせよ、せん妄にせよ、それでも彼らなりの論理やコンテクストはあるわけで、それを共有して相手の世界に入ること、あるいは敬意を示すことが、彼らの尊厳を守ることだと思って接してきた。共有しようともせず、病人扱いして馬鹿にするくらいだったら、ただ黙って横に座っていればいい。義妹がいたことで疲れが倍増した。
これまでずっと義父の面倒を見ていた義母も相当消耗しており、前の病院では院内感染をしていた。今日は私たちがいたせいで義父は機嫌よく話していたが、家では義母に暴力を振るうこともあったらしい。だから彼女は病院でも無理に延命することを希望しておらず、腕の点滴(一日400kcalくらいが限度)で十分だと言っていた。しかし転院の際に、病院としてはIVH(中心静脈栄養法)をしたい、でないと儲けにならない、いう方針を出していたのでIVHになっている。IVHの場合は一日1万円くらい費用がかかる。また認知症があるので個室が不可欠で、その差額ベッド代は全額自己負担になる(高額療養費の対象にならない)。へんな話だが、もし肺がんでなかったら長期化し、かなり経済的に苦しくなるだろう。


ふうう。想定内とはいえ、やはり気疲れした。帰りにショッピングセンターでケーキを買って、息子と家で食べた。砂糖とマーガリンの塊とはいえ、甘いものはやっぱり美味しい・・・



Ps.うちの父に関しては、地元J病院とI病院それぞれから電話がかかってきて(ケアマネが私の電話番号を教えたらしい)、「都会のK大病院のK先生がお知り合いだとしきりにおっしゃるので、それならばと、そちらに紹介状を書きました。そちらに一度見てもらってはどうですか」と言われた。地元のどこの病院にいっても、以前のVIP大病院の自慢をしているらしい。地元病院としては、それならどうぞそちらへお帰りください、と大喜びで厄介払いをするだろう。「いいえ、もうK病院には戻りません。戻れません。そちらでお願いします。お医者さんと本人の意思で対応を決めて動いてください。家族はいっさい文句を言いません」と宣言して、電話を切った。