ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 乳がんとアルコール

引越しの片付けと新年度の忙しさにかまけていたらあっという間に月末になってしまった。たいへん重症の方向音痴なので、慣れない街の買い物や電車の乗り換えでは必ずといっていいほど道を間違える。またこれまでと違い、車なしの生活なのであらゆる買い物を自分の手で運ばなければならない。そんな理由で歩きすぎ、疲れきっていたのだと思う。
さて、乳がんと酒の関係は昔から気になっていた。主治医に聞いても「いやあ、気分転換になりますし、たまには発散しないと」という一般論しか返ってこない。なぜ一般論かといえば、なんとなくよくないことはみんな経験的に知っていても、有害であるという強いエビデンスが乏しく、そのしくみも明らかになっていないからだ。がんの原因というのは、グレーのものについては「無い」ことにされ、学会が「黒」と認めたものだけが「ある」ことにされる。だからといって、グレーのものが安全だというわけではない。
アルコール中毒者の発ガン傾向を調べたこんなサイトをみつけた。まずエタノールそのものに発がん性があるので、通り道である喉頭や食道や胃の発がん率があがる。またフリーラジカルを発生させ、DNAの修復を行う葉酸を減少させる。大量に飲むと免疫機能も低下する。まさにがん細胞を育てているようなものだ。さらに、飲酒はエストロゲン増加や葉酸代謝の乱れを引き起こすので、これが乳がんの原因になるらしい。『乳がんのリスクファクター』という本も同じようなことを言っていた。上記サイトによればエタノールで10g 増加する毎に乳癌リスクは 7.1% 増加するそうだが、これは結構大きな数字ではないか。いやいやこれは中毒になるような大酒飲みの話であって、一般人が一杯やるくらいは平気ではないか、とみんな考えるだろうが(私も自分にそう言ってきたが)、「一杯ならば安全」なんていうエビデンスももちろん存在しないわけだ。だからリスクを避けたければ禁酒が望ましいということになる。禁酒したい人には、アレン・カーの『禁酒セラピー』がお勧めだ。あの舌のしびれるようなまずい液体なしには生きられなくなるのは、酒が麻薬だからだと教えてくれる。常習性のある合法的な麻薬ね。儲かる人たちがいるからけっして違法にならない(日本中、ビールの広告だらけだし)。
仕事で耐え切れない苦痛があったとき、私もけっこう飲んでいたが、自分の体にとってとてもよくなかった、と今では感じている(なまじ体質的に強いから、つい飲んでしまうのよね)。酒が作り出すホモ・ソーシャルな馴れ合いもすっかり嫌いになり、職場の飲み会も最低限度にしている。そういえばアル中ぎみだった職場の部長が重篤ながんで入院した。苦手な人物ではあったが、こうも予想どおり病気になられると、なんだか複雑な気分だ。私のまわりのアル中予備軍は、みんな立派な経歴で、「自分の人生こんなはずじゃなかった」タイプの人が多い。反面教師として、そうならないように気をつけようと思った。今の自分こそが自分の真価に見合ったものであって、それ以上でもそれ以下でもない。状況を変えたいと思ったら自分が努力するしかない。
それと最近は「女子飲み」つまり女どうしの飲み会がブームだとTVが騒いでいるが、これも飲酒市場を拡大させて儲けようとする企業の思惑が裏にあるに違いない。流行だからといって、グルメのフレンチの後にこんな飲み会やってたら、ますます乳がんが増えるんじゃないかなあ。私は女子飲みはイヤだな。本当に大好きな友人と一対一で飲めるならいいけど、みんなで騒ぐのは気づかれするだけだもの。
1) Baan R, Staif K, Grosse Y, et al. Carcinogenicity of alcoholic beverages. Lancet Oncol 8: 292-293, 2007
2) Singletary KW, Gapstur SM. Alcohol and Brest cancer: review of epidemiologic and experimental evidence and potential mechanisms. JAMA 286: 2143-51, 2001