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健康ブログであるような、ないような

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 産婦人科とがん

乳がんのときに、すぐに外科に行けたのは二つのきっかけがある。
一つ目は近所の産婦人科がひどかったこと。土日に休みたいばかりに陣痛促進剤をばんばん打って、みんな金曜日に出産させていた。促進剤の打ちすぎで死産だったという知人も少なくないが、誰も訴えず、入院中のフランス料理が人気とかで相変わらず繁盛している。そこだけは嫌だと思ったので、私は今かかっている市民病院で出産した。
二つ目は恩師の奥様が乳がんで、彼は女性を見るたびに「しこりがあったら絶対産婦人科に行ってはいけません、外科に行きなさい」と言ってくれた。奥様は産婦人科に行ったために誤診され、手遅れになり、初発から5年後に亡くなられた。乳がんのステージ高めの知人やブロガーの多くは産婦人科で「なんともないです」と言われて1、2年を無駄にした人が多い。
yoccyannさんのお知り合いが子宮がんで亡くなられたと伺ったが(言及することはご本人に承諾をいただいた)、思いつくのは産婦人科への不信感だ。考えてみれば不思議な科だ。何の営業努力をしなくても、自然の摂理で妊婦が次々とやってくる。
日本では通常のがんは、外科による手術と、アフターサービスとしての化学療法で治療される。言わば、PCを買った電気屋に、ついでにWORDやEXCELの使い方を教えさせるようなものだ。既に売り上げてしまった電気屋のモチベーションが下がるのは当然だ(ほんとの電気屋なら「次もよろしく」というメリットがあるが、外科に「この次」はない)。腫瘍内科医がいないせいでこうなる。これだけでも十分ひどいと思っていた。
しかし産婦人科は「外科」ですらない。何人も医者がいる科なら、同じ「切る」でも帝王切開の係と筋腫の係と腫瘍の係くらいは分かれているのだろうが(分かれていなかったら怖すぎる)、いずれにしてもがんの専門家でない可能性は高い。呼吸器や消化器で「外科」といえば大半はがんであるのと対照的だ。
とくに手術以前の、がんの診断に関しては非専門家が対応している可能性が高い。というのも、最初の診断は初診で(偶然)対応した医者がやる場合がほとんどだからだ。
yoccyannさんのお知り合い(以下、彼女)も、診断の時点で疑問が多かった。(ここからは純粋な私の憶測にすぎない、違っていたらごめんなさい) 骨転移がわかっていたのなら、CTや骨シンチはとっていたはずなのに、骨以外の浸潤や転移に気づかず、適切な対応ができなかったのはどういうことなのか。
これは、うちの父のチキン医師がCTすら見ておらず、リンパ浸潤はない、と言いきったのと重なる。要するに、CTを見るのが面倒くさかったのだと思う。私の市民病院の医師を見ていてわかったが、良心的な医者は空き時間に患者のCTを見て丁寧にチェックしてくれるが、そうでない医者は、その患者の診察の直前に初めて画像を開き、わずか2、3分でチェックする(だって膨大な量のカルテがあるのだもの。外来診察のついで「以外」に開く気力はないだろう)。その2、3分でデータを呼び出して、輪切りの画面をくるくるとスクロールさせて、丁寧に見る、ということが、「忙しくてできない」、「見るつもりがない」、または「どうせ見ても経験不足でわからないから見ない」場合は、おそらくno incident「何も問題ありません」という患者への報告になる。
いやCTならば放射線医がダブルチェックしてくれているはずだ、と思うかもしれないが、これも主治医が放射線医に丁寧にオーダーを出さないとチェックしない可能性がある。町の健康診断のX線でもわかるような10cmくらいの巨大腫瘍なら別だが・・・。私の場合はいつも「どこどこの○mmと○mmのGGOのチェックもお願いします」と丁寧に打ち込んでもらっている。彼女については、主治医がいい加減→ 一部(骨)のみの楽な治療→ 不具合→ 主治医(産婦人科)の放棄と放射線科への丸投げ →各種転移発覚、という流れだったのかな、と推測する。それをもってすばらしい「チーム医療」を標榜するその大学病院は、「なすりつけあいの無責任医療」に看板をかけなおしてほしいと思う。
普通の外科の場合は、命のかかったがんだということで患者側もそれなりに勉強したり要求したりする。だが産婦人科は一般に患者のリテラシーも低く、医者にお任せになり、その結果医者の責任感や緊張感が希薄になる。


「女性のからだのことだから産婦人科に行く」、という発想がそもそもおかしい。
がんに男も女もない。
細胞レベル、あるいはDNAレベルの話だ。
産婦人科に行くことのメリットは、患者に女しかないことだけだ。しかし医者が男や名誉男性である可能性は極めて高く、彼らが他の医者よりも、より女性に理解があるとは思えない。むしろ患者のひどさを「女だからひどい」と一般化し、ますます女嫌いになっている可能性が高い。さらには、「嫌いなのに<様>づけで呼ばされて飯のタネにしなければならない」ことに苛立ちを覚えて屈折しまくってる場合もある。だからデメリットばかりだ。
そういえばトラブル続きで指定病院が取り消されそうになっている女子医大なんかも、マッチョそうな病院だ。女子医大だから女性に優しいなんて思う時点でリテラシーが低いと思われる。