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 標準治療

 乳がんの初発の場合は標準治療が確立している。何年たっても再発しやすい「隠れんぼうが上手な」がんである一方、薬がたいへんよく効くがんでもある。だから、こういう場合はこういう治療が統計的に最も効果的だ、というデータがはっきりしている。それを標準治療と言う。
 ところが、再発患者の体験記などを読んでいると、初発の時に標準治療を受けていない人がとても多いことに気づく。もちろん、5年や10年前では治療水準が今よりも低かったから、現在の標準治療に至っていないのは当たり前だとしても、この2,3年にかかった人でも、そうした平均的な治療を受けていない人が結構いるのだ。そもそも自分の症例に対応する標準治療はどんなことなのかを知らない患者も結構多いのではないだろうか。手術を受けたら、少なくともザンクトガレンの表くらいは見ておく必要があると思う。標準治療がなされない全般的な理由は、そうした患者の知識の欠如。個別に考えると、こんなケースが考えられる。
・医者が乳腺の専門医でないなど、十分な知識をもっていないため(自分の主治医が乳腺の専門医か、それから乳がんの学会の「専門医」または「認定医」であるか、確認すること)
・病院にその設備がないため(小さなクリニックなどで、放射線照射の技術がないなど)
・その病院では、その標準的な薬剤の使用ができないため(どの薬を使えるかは、病院の種類によってずいぶん違う。保険適用にできるかどうか、などもかなり違う)
・医者が実験的に新薬や新治療法を試したいと思っているため(最先端のブランド病院では、研究データを出して、業績を積むことが医者の出世であるので、知ってか知らずか、そういう治験に参加させられてしまう)
・その患者が経済的に困窮していて、医者が気を利かせたため(患者が高齢の場合など)
・患者自身が、「自然」や「楽な治療」を望み、特定の治療法に偏見をもっている場合

自分が標準治療を受けていないとしたらその理由は何なのか、医者に聞いて把握しておく必要がある。もっとも標準治療をしなかったからといって医者の責任が問われることはない。総合的に状況を勘案して決めました、などと言い逃れされるのがオチ。責任は、あくまで患者がとらなければならない(責任とは、再発のリスクを負うということだ)。最近は「当院は標準治療を約束します」なんてことを売りにしている乳がんのクリニックもある。
それにしても日本の患者の場合、「標準治療を受けたい」ではなくて、自分だけはブランド病院のブランド医師に「人と違う」特別な治療を受けたい・・・という意識の方が強いような気がする。統計以外に何の指針もない空中戦のようながん治療において、自分を人と差異化させることが本質的に「得」かどうか、よく考えてほしい。お金や時間を損することは確かだ。そして、治療効果は・・・?