ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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術後の結果

(もう2ヶ月も経ってしまったが記録しておこう)
8/18
退院後、初めての外来。入院時は「取った〜、バンザイー」で済んだが、この日は細胞診の結果等がわかるので、かなりどきどきした。
 断端陰性、リンパ転移なし、BAC(限局型細気管支上皮癌)
めでたしめでたしで、TNM分類ではIaという一番軽いタイプだ。だが肺がんはI期全体の手術後5年後生存率は70%と比較的低めで、更に細かい分類をしないと自分のケースはわからない。たまたま拾った論文から仕入れた情報を聞いてみた。摘出したGGO(すりガラス状陰影)のCTの濃さと生存率は関係があるらしい。

「先生、私のGGOの透明度は?I~IVに分類されるみたいですが」
ん?そんなの知らないぞという顔なので、先生にコピーを見せた。
「あー、あれね」
知ってるそぶりはするが、こんなの地方の人がテキトーにやってる分類だ、といわんばかりのお返事。
「たぶんIかIIでしょうね。とにかくね、ほら、縦隔条件(白黒を反転させた像)で5mm以下のときは浸潤なし、5mmで25%以下、7mmから浸潤あり、ってゆうのがボクのG研での経験です。あなたのは全く写らない(=5mm以下)ですから」
と、ご自分の経験重視で、ニコニコと語ってくれた。

「では、野口分類では何ですか?」
「うーん、たぶんAかBかなあ。Cかなあ。…聞いてみます」
こちらは肺癌の医者なら絶対知っている分類で、無視はできないらしい。Aならば生存率100%なので、AかBかCかの違いは、私にとってはとてつもなく大きいのだよ、おい。


「縦隔で浸潤なしと予想されたのにリンパも取った理由は何ですか?」
しばらく黙っていた。要するにマニュアル上取ることになってるから取っただけでしょ?と代わりに私が答えてあげそうになった。はいはい、別にそれでいいですよ。マニュアル外のことをやって失敗されるよりは、慣れた手順の方がいいですからね。
たしか乳がんのときに、「なぜリンパを取るのか」医者に確認した方がいい、と学んだ記憶がある。実質的に、リンパを取ることで「転移を防ぐ」ことにはならない。リンパに浸潤している場合は既に他にもあちこち転移しているだろうし、逆にリンパに転移がなければリンパを取る必要はないのだから。免疫を働かせてもらうにはリンパは多い方がいいはずだ。乳がんならばその後の投薬の診断基準として必要な情報だが、肺がんについては、要するに「リンパ転移はありませんでした、よかったね」という気休めのため以外の理由はないような気がする… でもまあ、こうした「気休め」自体も、5年後生存率を有意に3%くらいは上げそうな気がするので、意義はあったと考えることにしよう。

「それから乳腺の先生が、6年前の化学療法のせいでは、とおっしゃっていたのですが、先生のご意見は?それならば同時期に放射線治療もやっていたのでその影響も考えられませんか?夫の副流煙は?」
放射線は胸だけにきちんとあててるから、関係ないでしょう」
あれ?再発防止のために両方の乳房にかなり広範囲にあててるし、私の肺癌は気管支近くだから、肺にもかかっていると思うのだけれど。でも肺癌の医者が乳腺の放射線の照射範囲を知らないのはあたりまえで、ドイツ現代小説の専門家がイタリア中世の抒情詩について知らないのと同じだろうなぁと思った。
「・・・そういうことより、ボクはむしろ遺伝かな、と思いますよ」
こちらは最新の肺癌トピックの一つで、非喫煙者の女性の肺癌には特定の遺伝子傾向が見られるからだ。それに特化した化学療法なども始まっている。ともあれ、乳がんの化学療法とは関係ないという認識を肺癌の主治医が示してくれたのは、なんとなく気がらくになった。
そんな話ばかりしていたので、肝心な患部を見るのを先生が忘れていたほどだった。
「ほかに何か勉強したことはありますか?ついでですからどうぞ、cypresさん?」でその日の診察は終わった。


8/29
その次の診察日。
「野口分類はBでした。生存率100%ですね」
調べてくれたらしい。BもAとほとんど変わらない生存率なのでほっとした。
「それから遺伝子も調べてみたのですが・・・(私もちょうどそれを頼もうと思っていました!)EGRF, ALKともに陰性でした」
つまり遺伝子のせいではなかったらしい。結局「原因」はわからずじまいだ。というか、そういうものを造った「私」自身が原因だった、というほかないように思った。それが私の結論だ。
ともあれ、今回手術したGGOについてはもう再発の心配はない。後はいくつか残っている、小さな多発性のAAH(GGOになる前の小さな病変)だけだ。
「先生、あの小さいAAHたち、いつごろから現れたのか、CTを比べたいのですが…。6年前から毎年撮っていますから」
これらも乳がん治療の影響なのかどうか、気になるところだ。たぶん手術したGGOと同じ頃に発生したのではないかな。先生は、はいはい、見ておきます、と返事しつつ、結果としていまだに見てくれていない(切るのが仕事の外科医であって、読影専門の放射線医ではないから腰が重そうだ)。私もCT画像をもらってきちんと比べればいいのだが、忙しくてできていない。だが、いわゆるがんかどうか不明の小さなものだから、あまり神経質になっても仕方ないし・・・ と思って今日に至っている。