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 二種類の退行

現代西洋文明は、自由、平等、民主主義なる価値観を主張する文明である。しかしこの価値観は、福祉社会、官僚主義、商業主義の現実と両立できない。論理的に不可能である。そのため現代人は無力感を感じ、その結果ナルシシズムという自己中心の心理的反応を示す。幼児化現象である…。
つまり現代人は二種類の退行現象を見せている。幼児化する退行と下位二層の脳が活性化された退行の二種類である。(北原惇『現代音楽と現代美術にいたる歴史』あとがきより)

北原惇氏の最新作の後書きから引用させていただいた。現代文明というのは根本的に無理なことを行おうとしており、それを「普遍主義」といった美名でごまかしている。「誰にでもやさしい社会に」と言いながら、病人や老人を経済的・制度的に生きにくくしている。その社会の仕組みを知ってしまった者は怒りをおぼえるだろう。だが怒っても効果がないし、不愉快になるだけ無駄だから、みんな気づかないふりをして、レディーメイドの「幸福」の方に逃避しようとする。それが幼児的退行だ。犬のストラップとか、ご当地スイーツとか、そんなものが生きがいになり、満足してしまう、幼児的な世界。そういえば最近のCMには、やたら動物が出てくる。わんちゃん、うさぎさん、牛さん・・・大人相手なのに、かわいい動物さえ出せば商品が売れるだなんて、まさに日本人が幼児化していることの証左ではないか。
そうした社会的な行き詰まり感をきっかけとして生じた退行は、さらに脳の機能そのものの退行を引き起こす。北原氏によれば、人間には、1.爬虫類の脳、2.原始的哺乳類の脳(大脳辺縁系)、3.進歩した哺乳類の脳(新皮質)、の三層の脳があるのだそうだが、理性的思考や美的な切磋琢磨を行わなくなると、俗に「ワニの脳」と言われる爬虫類の脳だけが働くことになり、ますます人間は感情的、暴力的、動物的になっていく。現代美術がくだらないのもそのせいだ。
感覚的に、こうした主張はとても納得がいく。とくに日本の社会の問題点は、国を動かす政治家(とくに自民党)がすべてワニの脳だけでものを考えていることだ。このところの首相や閣僚のバカ発言にはあきれる。アル中だったり、義理人情だったり、ホモソーシャルな連帯だけで社会が動き、国の要職が務まってしまうなんて。いや、そういう脳でなければ閣僚になれない。この国はアブナイと思う。
鳩山総務大臣は、ちゃんと責任感をもった人材だと、尊敬していたのに、きのうアホウ首相によって更迭されてしまった。がっかりだ。まともな人間には、あの爬虫類脳の集団は、生きにくいのだろうな。
現代音楽と現代美術にいたる歴史―動物学と脳科学から見た芸術論