ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 論文捏造

自衛隊中央病院の佐藤一彦医師が乳がん治療に関する論文を捏造し、Surgery紙に発表。温存療法の場合、通常手術後に放射線照射を行うが、「術前」の照射の有効性を実証する内容だった。ところが実際には、手術すら受けていない患者や、術後にさらに放射線照射を行った患者などを対象にしており、こうした12件のサンプルはデータとして全く意味のないものだった。乳がん患者として、こんなインチキ医者は許せない。いくつか気づいた点を書き出しておきたい。
・医者の倫理にもとるような犯罪は、医師免許剥奪という形で裁かれるべきではないか?どのような処分になるのか注目したい。
・論文発表は、犯人(と呼ばせてもらおう)が防衛医大に大学院生として在籍している時に行われた。だから防衛医大の指導教官の責任が問われるべきだ。防衛医大の教官は慶応卒が多いという話を聞いたことがある。防衛医大卒でありながら自衛隊中央病院に就職できたということは、同大の中でも優秀な学生で教授の特別な引きがあったと考えられる。それが逆にプレッシャーになっていたのだろうか?それとも常識や倫理をかなぐり捨てて業績主義に走る類型だったのだろうか?
防衛医大って… 国立の中では比較的入りやすい医大であり、しかも高額の授業料を払うのではなく逆に国家公務員として大学在籍中から給料がもらえる、恵まれた大学だ。こんな事件に出会うと、甘えた学生たちがわんさかいるのでは?と思ってしまう。
乳がんは他のがんと比べて、治療の効果が高く、かつ長い期間治療を要する病気。罹患者数も多い。そこが人々の「商業的な」関心を引き寄せやすく、こういう金儲けや論文捏造の温床になりかねない。患者もそういうことに注意しないといけない。
・しかし米国の専門誌がこんな論文をよくも掲載したものだ。いかがわしさに気づかなかったのだろうか。乳がんの治療法は世界的に五里霧中だということか。今、世界中でがんの研究が行われており、トップレベルの研究者たちは、がんのメカニズムや特効薬そのものの研究に携わっている。残念ながら日本の医者がその一隅を占めることはたいへん難しい。知的な意味でも、医学教育の伝統という意味でも。また、たとえ大学病院勤務であっても、日本の医者のほとんどは臨床医であり、研究を専門に行い得ないことも理由の一つだ。だから・・・世界的に名前を売りたいと思う医者の多くは、測定方法論や医療機器の活用法などといった「技術論」を専門にして、きわめて瑣末な研究(というより実験)を繰り返す。たとえばホルモン感受性を調べるオールレッドスコア方法の開発などでは日本人が有名だ。今回の捏造論文も、放射線照射の機器「だけは」充実している日本ならではの売り込み方であり、あるいはそういう国の論文だからこそアメリカのジャッジが信用した、ということかもしれない。うーん、わかりやすく言うと、ファッションデザイナーとして世界的に有名になりたいけれどパリやNYの本職には太刀打ちできないから、最先端のミシンによる「糸が見えない特殊な縫い方」を発表して脚光を浴びたが、実はセメダインで布をくっつけていただけ、という感じか。ま、野心は誰にでもあるものだけれど、こちらは「命」がかかってるのよ、それだけは忘れないでね、お医者さんたち―――そう言いたい。
・当該論文は PubMed でレジュメ検索可能。Surgery. 2006 May;139(5):617-23

陸自3佐が医学論文捏造 防衛庁、処分を検討

防衛医大は5日、自衛隊中央病院(東京都世田谷区)の外科医官
佐藤一彦3等陸佐(38)が筆頭執筆者として米専門誌に投稿、5月
に掲載された乳がん治療の論文に、データ捏造(ねつぞう)を含む
不正があったと発表した。
佐藤3佐は投稿した昨年5月は防衛医大の大学院生で、同大調査
委員会に「興味を引く内容にしたかった」と不正を認めたという。
防衛庁は今後、処分を検討する。
防衛医大などによると、論文は乳がんの乳房温存療法に関し、
患者12人の手術例などが記載されていた。
しかし、うち5人には手術が行われておらず病理検査結果のデータ
も捏造されたものだった。手術した7人についても、実際は手術後に
放射線照射を行っていたが、論文では照射なしで良好な治療結果
が出たように書かれていた。
また、共同執筆者とされた6人は、執筆者になっていることを知らな
かったか、論文の内容を詳しく把握していなかったという。うち1人
からの連絡で不正が発覚。同大は7月に調査委を設置、編集部は
9月に論文を取り下げた。 (2006年10月05日 西日本新聞)