ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 情報は誰のもの

父は82歳で田舎で独居している。これまで無病息災だったし、子供たちも忙しいのでお互い干渉せずにやってきた。ところが今回がん告知で呼び出されてしまい、関わらざるをえなくなった。話してみると、もう事務能力がなくなっている。年をとるとはこういうことかと思った。
例の無能&無気力の若造担当医(以下W)の地方総合病院は、そもそも目の治療で馴染みがあって近いから、と本人が選んだものだった。この時点で県立がんセンター等を選んでいれば楽だったのに、と思うが仕方ない(そこの県立GCもかなりレベルに問題があるのだが)。県内では無理なので、代わりの都市部の病院を子供たちで探し、特別に予約をとって見てくれるところがみつかった。通常の初診までは一ヶ月かかるが、来週予約を入れてくださるという。これは幸運だ。紹介書と医療データをもらってきてくださいと言われた。その手配で今日一日がつぶれた。長ったらしいが、メモがわりに書いてみる。


まず地方総合病院に電話した。退院したのだから、と外来にかけたのが間違いだった。
「W先生は今日はおやすみです、ガチャン」
またかける。
「W先生には話が行ってるんですか?」
「いいえ、話をしたいからいま電話してるんです」
「W先生は来週の火曜まで来ません。そのときに外来で来てください」
「それでは間に合いません。先生にファックスでも送れませんか」
「無理です」
「どうしてもデータをもらってこないと先方の病院を受診できないんです」
「それなら地域医療連携室に聞いてください」
こんどは同室の返答、「データがほしいのだったら、先方の病院からうちの方に情報提供依頼を出してもらってください、でないと何もできませんから、ガチャン」
できるはずないでしょ。
そこで入院病棟に電話した。幸い告知時に同席してくれた看護師さんが出てくれたおかげで事情を話すことができた(看護師の名前は覚えておくものだと痛感)。単に紹介状とデータがほしい、というだけではWはのらりくらりするかもしれない。だから念を押さねば。
「よろしいですか、メモをとってW先生に見せてくださいね。紹介状のあて先は、○○大病院の消化器内科の○○大先生。来週○日に緊急で特別に診察していただく予定。CT,EUS,すべての画像データをCD-ROMでくださいと言われてます!私がそちらへ行けるのはこんどの金曜日しかないので、その日までに全部そろえてください」
「うーん、W先生、できるかどうかわからないなあー」


数時間後にその看護師さんから電話が来た。
「W先生、紹介状書いてくださるそうです」
おっし、さすがの若造も反応したか。業界大手の○○大病院に対して、データひとつ揃えられないとか、恥ずかしすぎる。お前がろくな検査もせず、ステージも確認もせずにBSCに送ったことを告げ口してやるぞ。
「・・・ただですね、CTや一部の検査は前の病院で行ったので出せないそうです。ですから地元病院さんに行ってもらってきてくれますか」
前の病院だからではなくて、たんにWがCD-ROMにコピーする仕方がわからないせいじゃ?
「あのう、患者本人のデータなのでもらえるはずでは?これから地元病院に電話して必ず了承をもらいますから、とにかくそちらで出してください」
「うーん、ちょっとー」

もらえないかもしれない。そこで地元病院に電話。ここは担当医が不在だったが総務部経由で看護師がきちん相手をしてくれた。
「へんですねえ。CD-ROM代を患者さんにはお支払いいただいて、そのCDと診療情報を全部総合病院にお渡ししたはずですからねえ。基本的に検査結果は患者さんに所属するものです。総合病院さんは情報をほかに出せない事情があるのかしら。それならばそこからCDを借用して先方の病院にもっていって、後で返却するかたちにしてはどうですか。もう一度総合病院さんと相談してみてください」
「そちらから総合病院にお電話いただいて、情報提供の許可をお伝えいただくことはできませんか」
「すでに総合病院さんにお渡ししてしまったものですから、こちらは何も・・」
この人の言うことはまともだ。若造の身勝手な理由で渡せないだけだろうから、いくら総合病院と相談してもらちがあかない。結局再度CD-ROM代を払ってこの地方病院からコピーしてもらうことにした。


これでなんとかデータがそろうはず。週末に実際に受け取りに行く。それにしても、こんな作業を老いた父自身にできるはずもない。できたとしても何ヶ月もかかって、手遅れになるだろう。自分の情報なのに自分の手に入らない。
ふう。おそらく田舎の病院では、よりよい治療を求めて転院するとか、セカンドオピニオンを受けるとかいうこと自体が極めて稀で、医者側も情報提供に慣れていないのだろう。患者はみんな情報弱者の高齢者だし。