ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 おばさん木を叩く

仕事で疲れて帰宅したら、3チャンネルで中村紘子ラフマニノフのP協奏曲2番を弾いていた(以下、辛口です。好きな人は読まないでくださいませ)。いやー彼女をTVで見るのは久しぶりだけど、こんなの映しちゃいかんでしょ、と。そもそも指が回って体力のある若手が弾くような曲を選ぶのが間違い。曲のロマンチックさと日本人受けを狙って起死回生をもくろんだのだろうけれど。昔日の栄光を意識しすぎて、現実の技術レベルを認識できていないんではないか、この人は。素人でも分かるミスタッチがたくさん。ミスすると、その後必ず乱暴にバンバンとキーを叩いてごまかす。で、テンポもぐちゃぐちゃ。終演後、アナウンサーが苦い顔で「いやあ迫力でしたね」と一言。ほかにほめようがない。フジコ・ヘミングを叩く暇があったら、ハノンでもさらうべきではなかったか。(胸の大きく開いた緑のドレスをお召しになっていた点も、乳がん患者としては気になったが、もう何も言うまい)
「権力」として考えると・・・「私は偉いのよ」という意識からか、指揮者が若手のメルクル準のせいか、完全に指揮を無視。オケと全く合っていない。合わす気がない。合わなかったら、オケが悪い。でもここは権力発揮の場じゃないのよ、音楽を聴きたいのよ、私たち聴衆は・・・そういうことをわかってない中村さん。日本を代表するピアニストに皆が心酔してると思い込んでる。なんかなあ。あんた、白黒の木を叩いてるだけよ。
その後映された、同じ曲で踊った村主さんのスケートが口直し(目直し?)だった。美しかった。精神の集中とか、鍛錬とか、洗練とか、そういうものを感じさせた。
それでもなぜ演奏を通して聞いてしまったかというと、先日映画『ラフマニノフ』を見たからだ。ロシア映画の渋いつくりだったが、音楽と映像はちゃんとしてた。内容上必要ないのに時間軸が何度も入れ替わった点は疑問だったが。ラフマニノフはロシア人でありながら亡命して「ハリウッド風」音楽の確立に貢献した人物だが、いまさらロシア映画までハリウッド風にならなくていいからね、と思った。二人の女性の間で揺れ動く彼、それでも結局最後は妻と家庭に戻る。そんなテーマよりは、むしろ彼のうつ病的な気性や人格を抉り出してほしかったなあ。でも最後の場面は印象的で、すてきだった。パガニーニの狂詩曲による主題が流れて、お天気雨の中、緑の庭でセルゲイが家族とずぶぬれになって抱き合うシーンにほろりとしたんだ。