ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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 父のこと・・・

今田舎から帰ってきた。父の食道がんの宣告に同伴していた。80歳を超えた高齢だしヘビースモーカーなのでひとつくらいがんがあってもおかしくないが、本人は「うちはがんの家系じゃないのになあ」と不思議がっている。
いえいえ、娘さんがすでに二つもやってますよ、と喉まで出かかったが、これは秘密だ。
それにしても田舎の老人相手のがん宣告はこんなに牧歌的でいいのか。病期や大きさの説明もなく、説明として手渡されたのは「がん情報サービス」サイトのプリントアウト(こんなの知ってるわい)、若い先生の手にあるのは「初めての食道がん告知マニュアル」的な本(「初めての」は「告知」にかかる)。手がぷるぷる震えとるぞ。後で頼み込んで内視鏡所見等をもらったが、そういうのがなかったらまったく状況がわからない。
「ご高齢で手術は負担が大きいですからねえ。化学療法っていうのだとこんどはヘロヘロになるんですよねえ・・・」こんな感じ。化学療法(ケモ)を行っても一時的に腫瘍が縮小する可能性があるだけで根治にはならないこと、QOLや免疫が下がってかえって寿命を縮める可能性も高いこと、そんな一般的な知識を披瀝して、私もあまり勧めなかった。放射線(ラジ)の単独はあまりなく、ケモラジ併用が一般的らしい。
高齢者に積極的な治療をしたくない医者と、私の雰囲気から察して、父本人も、もちろん手術はいやだし、化学療法もあまりうけたくない、という返答になり、その場は終わった。「何もしなければあと1、2ヶ月でものが食べられなくなり、1年くらいの命ですねえ」といったはっきりした宣告となった(余命なんて無意味な概念だが、本人にはショックだろう)。
帰り道の新幹線から、気がめいり始めた。父にしてみれば細かいことがわからないので、腫瘍が大きすぎて手の施しようがない、と理解したかもしれない。また私が積極的な治療を進めなかったり、その後のケースワーカとの面談でホスピスの話をしていたりしたので、もしかしたら父を見放したと思ったのかもしれない。表情は穏やかだったが、しゅん、とした感じだった・・。彼の心中を察するといたたまれない。
病気と「闘った」気になる「ために」つらいケモを受けるのは本末転倒だし、おろかだと思っている。
だが、まったくなにもしないでがんに向かうのも精神的に相当つらいことだと気がついた(私はもう消失しているかもしれないけれど、病気や社会とずっとけんか腰で戦っていたからこそ、気がまぎれたのかもしれない)。
途中本屋で本を買い、調べた。父は頚部食道がんで、一箇所1/2周3,4cmの塊。固有筋層まで達しているので進行がんだが、多臓器浸潤や(リンパ等)転移はない。II期になる。
うむ、これ、体力があれば手術で根治できるかもしれない。ただし食道がん手術は難易度が高く、田舎の病院では無理。大都会のがんセンター等に行かないと。でも心臓の調子もよくないので高齢者には無理か?ちなみにその田舎病院は、みかけは大きな箱物だが、HPの手術実績を見ると一番多いのが目や腰の手術で(4,500件)、各部位のがんの手術などは年間10にも満たない(私の判断基準として、専門の常勤医師がまともに切っていれば年間50件くらいいくはず)。やっぱり地域拠点病院は「総合病院」を歌っていてもみかけだおしなのだね。
逆に転移なしのII期ならば、治療をあきらめるほどではないのかも。食道がんのケモラジについて調べると、「手術と同程度の」効果あり。こちらのサイトによると「臨床病期II/III切除可能食道癌に対する化学放射線療法第II相試験(JCOG9906)が実施され,完全奏効割合62.2%,生存期間中央値29カ月,3年生存割合45%,5年生存割合37%」でこんな生存曲線。せいぜい2,3ヶ月の延命にすぎないと思っていたら、3、4割の人が根治する?それならば治療の価値があるのではないか?扁平上皮がんは放射線が効きやすいらしい。無治療なんて選択した私はおろかだった、と思った。
そんなこんなで、あらゆるコネを使ってでもブランド病院で手術を受けさせるか、それとも今の病院でケモラジ受けさせるか(主治医は新米君だが、技術がものをいう外科医と違って内科医は基本的に役人で、標準治療は施せるはずだと認識)、それともなにもせず余生を過ごさせるのか・・・・ぐるぐる頭のなかをめぐっている。また現在一人暮らしで、息子(弟)と娘(私)は離れて生活しているので、介護等が必要になったときにどう面倒みるのか。いわゆる介護問題もある。
ともあれ、いったん退院して仕事のことなど片付けさせたのち、ケモラジを受けるよう説得しようと思っている。yoccyannさん、sinkoさん、おふたりだったらどう考えるのだろう。
今日は眠れそうにないので、まずこの二人に呼びかけたいと思った。
アドバイスも欲しいが、なんとなく二人の魂に呼びかけたいと思ったのだ。