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 バレエ『眠りの森の美女』


ロイヤル・バレエのSleeping Beautyを見たので、観劇メモを(もっちろん、予備知識と先入観なしの自分勝手な素人感想ですとも)。
誰でも楽しめる豪華絢爛な舞台で、第二幕の100年後という設定から第三幕では衣装ががらっと変わるのも見物。王子と王女の結婚式がエンディングなので文句なしにハッピーエンドだ(百年も受動的に寝て待ち、男のキスで目覚めることのジェンダー的なひどさは措いておこう。王女の身分、美貌、王子の愛、と三点揃ったオーロラは曇りなき(女の)幸せの体現なのだ。でも白馬に乗って悪の女王と闘うウルトラマッチョなディズニーの王子と比べると、リラの精に全部やっつけてもらい自動的に夢や妄想を叶えてもらうバレエ版の王子の方がずっとずっと受動的でフェミニンな点が笑える!)。
姫誕生の第一幕は主役級が登場しない。ソリスト間の巧拙の差が大きくてはらはらしたのと、日本人ダンサーが多かったのに驚いた。リラの精(名前不明)が、大柄で大雑把で硬くて、なぜこんな重要な役を?と不思議になった(唯一アカデミーからの叩き上げだから?)。Yuhui Choe(日本出身, First Solist)という人が妖精の一人の役で(第三幕はブルーバードで出場)ダントツにうまくて人目をひいていた。しかし極端な笑顔と巨大な目メイクで目立ち過ぎていたような。それこそこの作品では「笑顔」はオーロラ姫のアトリビュートなのだから、端役の妖精がこんなにニッカリアピールしちゃいけないでしょうに。回転中は真顔なので、生まれつきの顔ではないはずだ。あれだけ笑顔をつくると顔から胸部が硬直するため、指先足先に神経が行き渡らず、却って顔の大きさが目立つので逆効果だと思う。下腹部の筋肉がすごく強いので、そこだけで足をブイブイ振り上げて踊る感じになってしまう(だから群舞でも一人目立つのかも)。コアなファンがついているのか拍手がすごくて次期プリンシパル確実な感じだが、彼女には賛否両論あるのでは、と思った。
第二幕、王女のSarah Lambさん登場。本物の姫で、文句なく美しい。何が美しいのかと観察するに、手首、肘、肩の関節が柔らかく、代わりにあらゆる筋肉を隅々まで動かせるので、アームズのすべてのポーズが絵になっている。アンオーのときの人差し指の立ち具合など、萌える。天性のものなのか、見られることを意識しきった結果なのかわからないが、優雅で美しい姫だから、ロイヤルの宝物だろう(が、この人もアメリカからの移籍組で知性派、もしかしたらこちらのインタビューはChoeを意識してのこと?)。王子のMatthew Golding は、普通の優等生だ。格別表現力があるわけでもなく、跳躍が高いとかいうこともなく、ロシアの2・3流バレエ団にいそうなタイプだが、これもほかに二番手がいないせいなのかな。赤ずきんの狼や魔女の部下のネズミなどは力と個性のあるダンサーが揃っていたのになあ。
後で調べてみると、ロイヤルはアカデミーの叩き上げソリストがあまり育っておらず、ほとんどがバレエコンクール入賞者などの外国勢の引き抜きだ(パリ・オペラ座と対照的)。だからローザンヌで入賞した日本人が次々と入団してしまう。実力主義と言えば聞こえがいいが、内部教育の失敗や、均一の技法や様式の継承ができなくなっている点では由々しき問題ではないのかな。
ps.TV撮影をしていたので、このキャスティングでライブ・ビューイングを見ることができるようだ。