ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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引き続きどうぞよろしくお願いします。

 「いやーっ!」

夕方TBSテレビをつけていたら、「余命1ヵ月の花嫁」という特集をやっていた。乳がんの女性の話だったので、「番組のアラを探してブログに書き込んでやるぞー!」という意気込みで(これがいかんのか、私?)、じっと見ていた。
その人自身に対しては、最後に愛する恋人と幸せな日々を暮らすことができて、よかったな、と素直にエールを送りたい気持ちだ。だけど番組の作り方がやっぱり、ジェンダー的に、いやだった。
主人公は、イベントコンパニオンをやっているようなたいへんな美人(たしか22歳)。レースクイーンのミニスカの画像がばしばし登場する。術前抗がん剤の投与を受け、髪が抜け始めたその瞬間に、鏡の前で「いやーっ!」と大声で絶叫する(もちろん、本人ではなく、俳優が演じている)。次の見せ場が、胸の全摘。結局のところ、がんや死の恐怖ではなく、髪や胸といった「美」を損なうことの恐怖ばかりが前面に出されている。女なんだから、そんなふうなんでしょ? 女はそんなふうに振舞わないといけませんよ? そういうマスコミからのメッセージが次々と発せられる。こういった番組があるからこそ、余計にみんなが脱毛を恐怖するんじゃないか。脱毛がショックだったのは事実だろうが、だからといって、この女性も本当にこんなに絶叫したのだろうか。この絶叫、聞いている私の方が恥ずかしかったぞ。まるで目玉が三つになったとか、鼻が無くなった(ゴーゴリ風)みたいな、猟奇的な叫びだったのだから。事前にわかっているんだから、「ついにきたか」「あーあ」ってなもんじゃないか、普通は?
そして、そんな彼女のことでも、自然体で受け入れて「あげる」彼氏が、とても立派な人のように描かれている。その彼氏はいい人なんだろうと思うが、問題は、「女の価値は美にしかなく、そういう価値のなくなった女でも受け入れてあげる男って、なんて人格者なんだろう!」という男の自画自賛がぷんぷんと漂ってくるところが、いやだった。もちろん、その彼氏本人ではなく、番組を作る男たちの、自画自賛だ。
というわけで、乳がん患者への世間の同情は、「がん」だからではなくて、「女」の「美」を失ったことへの同情なのではあるまいかと思われてならない。それはたいへんうっとおしいし、余計なお世話だ。私は何かが減ったとは、まったく思わん。むしろいろいろな経験が増えたと思っている。
それから、「愛」の美名のもとに、いろいろな問題をごまかさないでほしい。
(なお、番組の途中で子どもが帰宅して、チャンネルを変えてしまったので、最後にこの女性がどうなったのかはわからない。往生されたのだろうか?知ってる人がいたら教えてくださいませ)