ergo sum

健康ブログであるような、ないような

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患者会デビュー

患者会主催の講演会に行ってみた。一度「ぬーがん患者」なるものをこの目で見てみたい、という好奇心からだった。主催者側の予想を超えて170人もの人が集まっていた。夫とおぼしき男性も何人か。妻のことを一生懸命質問していたおじいさん、かっこよかった。20歳くらいの男子がいごこち悪そうにすわっているのが気になっていたのだが、Zさんも着眼されたらしく、「お若い男性もいらっしゃいますねえ、奥様もお若いのかしら?」と問うたところ、お母様のお供でついてきた息子さんだったらしく、会場にはほのぼの空気が流れた。娘ならともかく、息子がついてきてくれるって素敵だ。うちの子も20歳過ぎたら連れてこようと思った(夫はいらん)。
普通の、ちょっとばかりみなりのしっかりした人たちだが、無駄なことに時間使ってないわよっていう緊迫感を漂わせていた。今日の会場に来ていた人たち、Zさんが誇らしく言う通り「薬や医師について勉強している立派な人たち」だ。いいかえれば、私も含めてだが、自分だけはなんとしても助かりたい、その可能性があると信じている人たちでもある。
10年以上経って、中には26年目に再発した人たちをこの目で見ることができた。再発してもマーカー値がまったく上がらないケースが多いことも知った。脱毛してスカーフをまく場合、後ろから脱毛が見えてしまうこと、かんぜんにつるつるなわけではなく、まだらな貧乏臭い感じであること、いいかえればもみあげはのこるかもしれないとわかったことも収穫だ。
S先生の講演は主にホルモン剤フェマールや分子標的薬アバスチンなどの最新の薬の説明で、ためになった。とくにホルモン5年の後に放っておくとやはり再発率が上がってくるようなので、間があいてでも他の薬をやったほうがいい、という統計的説得は重要だったと思う。
先生が使用した薬のデータについてのパワポは、実にきれいでしっかりしたデザインの表やグラフ。おそらく製薬会社や学会などから提供されたデータをそのまま使っているのだろう。きれいなテンプレートでイラストもいっぱい。目下仕事で自分用のパワポプレゼンを用意している私からみると、うらやましい。「パワポいーな。金かかってるなー」(心の声)。
医学的には何も間違っていないのだろうが、頻繁に言及される薬剤とそうでない薬剤など、微妙な温度差があることは感じた。私が使用予定の某薬剤の名は一度も聞かなかった。講演会場を提供しているG製薬からみて、U製薬が敵だからか?タキソテールやアバスチンについては、「医療経済について」と称して価格の問題や、国庫負担圧迫が予想されることからの保険適用の遅れなどが具体的に説明されたが(つまりアバスチンを1年間使おうと思うと1000万円以上かかる!国庫負担は何十億…)、肝心なホルモン剤の経済性についてはほとんど説明がなかった。ここ数日私が一番感じているのは、乳がん市場において一番儲かるのはおそらくホルモン治療薬だということだ。投与が長期間に渡るし、投与対象者数が最も多いからだ。そしてそこに医療制度と製薬会社の思惑もあるに違いない、ひょっとしたら医者が抗がん剤よりホルモン剤を好むのはこの問題と無関係ではないのではないか、と。少なくとも製薬会社は抗がん剤よりもホルモン剤の開発・認可に積極的なはずだ。
Zさん、気概がよく、経験豊かで、そして人がいい。この会場は皆さんがB剤でお世話になってるG社さんのおかげよ、S先生のお兄さんはM党の代議士で今度選挙に出るからよろしくね、なんて言ってしまう。あるいは会員のJさんのコンサートを強く宣伝する。
会に対して純粋な非政治性や公益性を求める人には承服しがたいだろう。だがZさんもそれを承知でやっているのだと思う。各自が希望と生きがいを求める親睦団体なのだから、本来的に主観的にならざるをえない。心霊治療を説く会員(いた!)を否定しないのと同様に、気分のいいもの、お世話になったものを各自が宣伝する。各自の責任で判断してくれ、ということだ。だが最大手の患者会の宿命か、判断能力のない患者もかなりの割合でいることを考えれば、曲解によって会そのものが批判を受けることもあるだろう。私の感じ方だけを言うならば、Zさんならばその人柄がよく理解できるので、何を薦めてもかまわない。だが周りの人や利益団体が同様の物言いをして利用するという可能性もないではない。一言付け加えるならば、B会に出入りしている医師たちを、私はあまり好きではない。父母会や同窓会に頻繁に出て顔を売っている教師がいかがわしいのと同じだ。うるわしい慈善であるとしても、彼の本業ではないからだ。医者に患者の声を聞く必要があるとするならば、まずは自分の患者から聞くべきだ。