ergo sum

健康ブログであるような、ないような

はてなダイアリーからの引越しにつきリニューアル模索中。

引き続きどうぞよろしくお願いします。

 サハラ砂漠

星の王子さま」の舞台となった砂漠の写真展に行ってきた。風紋で不思議な模様がずっと広がる。あたりには何もない。こんな風景の中で、星の王子さまはふっと消えていくのだ(天に昇ったという説と、死んだという説がある)。
サン=テグジュペリは、マザコン風味のわがままおぼっちゃまだし、王子と薔薇の関係は「ハラスメントの関係」で、そんなに感動するような英雄的な人物ではないのだが・・・ということは前に書いたが、面白いのは、飛行機事故マニアだったということ。しかも、自分自身で3度も4度も、とんでもない事故に遭っている。サハラ砂漠への不時着、エンジン故障、空港での着地失敗・・・と、死ぬ直前にはケガでぼろぼろの体だった。飛行服も自分で着れないありさまで、人に手伝ってもらってようやく飛行機に乗り込む。そしてそれきり行方不明になった。1944年のことだ。
『夜間飛行』などを読むと、飛行機乗りの視野がどういうものか、わかる。上から下の地上を見下ろすので、地上の家や教会も「点」でしかない。当時は飛行機の照明もなく、しかも急いで郵便物を運ぶために夜間も飛行しないといけなかったから、飛行時間の大半は真っ暗闇の中。たった一人、飛べば吹くようなプロペラ機の中で、圧倒的な孤独を何十時間も過ごすのだ。空の孤独も、砂漠の孤独も同じ。そういう孤独が王子さまという幻影を作り出したのだろう。だが、彼が現実に対峙しなければならないのは、自分自身だっただろうと思う。

copyright @ Y.Yamaguchi)
星の王子さま―オリジナル版