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 『星の王子さま』はハラスメントの物語…?

『ハラスメントは連鎖する』は、表面上はなんの問題もない人生なのに、なぜか空が曇っているように感じる人たちに向けて、とてもうまくハラスメントの心理を解説している本だ。特定の人との人間関係がつらくてしょうがないときに、多くの人は、人間には相性があるから仕方がない、相手も悪意があるわけではない、完璧な人などいない、などと言って相手を「嫌いだ」と認識しないよう努力する。その結果、気づかないうちに、すべては「自分が悪い」と思い込む(自分に落ち度があった、自分に能力がなかった、努力が足りなかったetc.)ので、深刻な自己否定に陥ってしまう。それが、その人を根本のところで不幸にしている。
ハラスメントの本質は、AがBに対して行う「行為」そのものではない。AがBに対して権力をもつために、Aにおける不適切な動機(自己愛、わがまま、公私混同、ストレス解消…)がA自身の内面においてもBにおいても隠ぺいされ、むしろそれは「Bのためなのだ」「Bのせいなのだ」というメッセージに変換され、そのためにBが深刻な自己否定に至る、そういう精神的な支配の構造なのだ。しばしばハラスメントが「魂の殺人」と呼ばれるのは、誇張でもなんでもなく、実質的にBの精神が殺されているからなのだ。
この構造は、親子、師弟、男女など、あらゆる関係に共通している。特に母子関係は、逃げ道がなく、毎日のことなので深刻になりがちだ(私も息子に、「あなたのためなのよ」と言って叱るのは絶対に避けるように注意している)。こうやってみると、身の周りにはハラスメントがあふれている。そして…著者によれば『星の王子さま』も典型的なハラスメントの物語なのだそうだ。言われてみるとピンとくる。バラが王子にさまざまな不快なことを言う。王子は自分のせいだと思う。誰かに相談する。相談相手のキツネが、実は最悪のパターンのカウンセラーで、王子の自己否定を極大化させてしまう。その結果王子は自殺する。―― 一つの解釈としてはあてはまるように思う。そう思ってもう一度読み始めたら、フレーズの随所に孤独と自己疎外が表れていて、ああ、ほんとだ、と。
機会があったら、また続きを書きたい。

ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛 (光文社新書)